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ピッティウオモ報告タイトル

マリネッラ写真
親切な紳士マリネッラ氏

毎年お正月明けににいくイタリア出張。いつも誰か道ずれがいるが今回は一人旅。旅の始まりはいつものように大好きなローマから。

馴染みの店で好物の子羊のスペアリブ「アバッキオ」冬野菜「プンタレッラ」を食べ次の日の朝ナポリに電車で入る。
5年前訪れた際は、お目当てのナポリ仕立のテーラーに全く出会えずただ本物のピッツアを食べただけの旅だったが今回はタクシードライバーに聞いて、世界一のネクタイの店と名高い「マリネッラ」をすぐ見つけることができた。間口3mあるかないかの小さな店、そこには既に5人の客がいた。さっそくネクタイを選ぶ。一人旅なのであまりたくさん買えないがとりあえず15本買おうといろいろ選んでいるとナポリ男たちがどんどん入ってくる。店は10坪もない。しばらくすると店の前が行列になってくる。店員さんにいつもこんなにお客さんがたくさん来るのと聞いたら、「きょうは土曜だからちょっと多いが、ま、いつものことだね。」と軽くおっしゃる。
普通イタリアでのネクタイの2倍以上の値段だがいかにここのネクタイの人気が高いかわかる。そのネクタイをよく観察するとよくある小紋プリント柄の普通のタイにしか見えないが、素材のシルクが目が細かくびっしり詰まった織り方で、にもかかわらずけっして固くない。作りもきわめて丁寧。特にプリントものは裏地を使わず表の服地を使って裏を仕立てるリッチな仕様。ジェントルマンのモノ選びの基準として、けっしてこれみよがしのピカピカしら高級なものを選ぶのではなく、たとえ自分だけにしかわからなくても上質なものを身につけるという哲学がある。マリネッラのタイはそんなジェントルマンのお眼鏡にかなったネクタイだった。マリネッラのネクタイだけはすり切れてもナポリ人たちは大事にするそうだ。

ナポリのエレガントな老人
袖口とシャツがエレガント

店を後にして、美しい広場や、古城をみたのち、卵城ちかくのトラットリア「マリノ」へいく。おめあてのナポリピッツアを食べていたときひとりのスーツ姿の背の曲がった老人が店に入ってきた。その老人は馴染みらしく若い店員は丁重にいい席に案内し、笑顔で挨拶をかわしていた。老人はピッツアを黙々と食べていたのだがその人の着ている服をこっそり観察すると、たぶんスーパー100s以上の細番手素材で作られた完璧にクラシックのディテールを備えた美しいスーツだった。
この老人とスーツのようにクラシックな装いとは「老い」をドーランで塗り込め若く見せるためのツールではなく、「老い」を「成熟」という美しさに変換する装置なのだ。デザイナーによるスーツ、いわいるモーダ系スーツは毎年シルエットの変更があるため3年前のスーツはもう違和感がある。でもこの老人の服に表現されているクラシックは何年もかかかって積み重ねられた美意識に基づいている。年を経過して年輪のように美しさを増す服なのだ。イタリアにいるとこんな年老いた人に美しさ、セクシーさを感じる。
古いものに最大の価値をみいだすイタリア人たちは古いもの表現するのに2つのイタリア語を使っている。ひとつはvecchio=古ぼけたという悪い意味。もうひとつはantico=古くなってよくなる意=アンティック。治安がわるいとかいわれるが広場や町も美しくナポリに来てよかった。

マンニーナ親方
採寸中のマンニーナの親方

次の日、ローマを発ちフィレンツエに向かう。駅に着きすぐにいつも立ち寄るポンテベッキオ近くの靴屋マンニーナに行く。
ここは松山猛さんがすすめていたり、来日してオーダー会を開いたりして「fatto a mano=手作り」が自慢の日本でも有名な靴屋さん。フィレンツエに来るたびいつも立ち寄り、靴やカバン、シャツなんかも買ったりしていた。今回は思い切って靴をオーダーしてみることにした。私の足は典型的な日本人の幅広甲高でシャープでかっこいい靴は全く履けないのでいつかオーダーしてみたかった。私のつたないイタリア語で形、色、縫い糸、グッドイヤーかマッケイか底の仕立て法などをうちあわせた。足形(ラスト)を作るので今後はファックスでもオーダーできるとのこと。これがうまくいったら次に作る靴のことも頭に浮かぶ。しかし物をオーダーするという行為はサンプルをみたり、親方(マエストロ)と語り合ったり、出来上がりを想像したりしてとても幸せな気分だ。こんな気分を当店のお客さまにも味わっていただきたい。靴を作ることでオーダーする顧客の立場になってそんなことを強く思った。出来上がりは2ヶ月後。本当に楽しみだ。

マンニーナでオーダーした靴が届いた!!・・・美しい。

ピッティウオモ会場
ピッティウオモ会場とバイヤー達
シングルブレスト
シングルのオルタネートストライプ
ダブルブレスト
ダブルブレストもよく見かけた

その後今回の旅の目的のひとつピッティウオモに行く。ピッティウオモは世界最大の紳士服フェアのひとつで1月と7月の2度開催される。ピッティという名前なのでピッティ宮殿で開催されいると思われがちだがフィレンツエ駅の北徒歩5分のところにある古い要塞址の広大な敷地で洋服バイヤーむけにおこなわれている。
この期間はフィレンツエの街にファッションの香りが立ちのぼる。ただでさえ美しい町並みに、端正に着込んだ男女たちの姿が映える。会場前の登録ゾーンはいつもすごい人並みだが今回は最終日にいったのですぐに入場登録も完了し、広大な敷地の会場にはいる。

フェア会場にはカジュアルから伝統的な装いまで男の服のすべてがあると言ってもいい。何百ものメーカーのブースには世界中からのバイヤーが訪れ、次のシーズンの仕入れを行う。いくつものファションショーも行われる。テーマのカラーなども提示される。クラシコイタリア協会の主催するクラシコイタリアゾーンは多くのバイヤーたちを集めて最大の建物の2階に陣取っている。

ちょっと前によくみた例えば原色糸の縫い糸を使ったスーツとか奇抜なディテールはすっかり陰をひそめ、オーソドックスな正統派のスーツが目につく。ピッティに参加しているスーツメーカーは高級どころが多い。その辺りに変ったデザインのスーツが求められるはずもなく、カシミア使い、細番手などでつくられた綺麗ラインなスーツを顧客から求められているのである。一見当たり前のディテールの中にハンド工程を多く盛り込み、高品質の香りを漂わせたブリオーニの路線はやはり正しかったと言うべきか。ひょっとしたら昨今のユーロ高が男の服の世界にも影響を与えているかもしれない。ユーロ発足当初1ユーロ100円前後だったのが現在140円の約4割高。上代15万のスーツなら21万になる。なかなかそのような高いスーツに遊び心、冒険はできないのではないか。それが奇抜なデザインが消えた一因かもしれない。展示されているスーツにはフランネルなど紡毛使いのものが多かったが、これが来年流行するというのは早計。なぜなら紡毛ものはふっくらして見栄えがよく、フェアなどの展示にはよく使われる。でも一般の市場にはそれが反映されないケースも多いのだ。

多くの服を見るのに少し疲れ、街にもどる。ちかごろフィレンツエはとても人気があり殺人的なひとごみ。まるで初詣の神社のようだ。人をかき分けフィレンツエサンタマリアノッベラ駅にたどり着き今日の目的地パルマまで電車に乗る。電車に乗ること2時間、パルマの宿で荷物をとき、宿の女主人にすすめられた近くの小さなトラットリアで夕食。発泡性の赤ワイン、ランブルスコがこのあたりの地酒。日本では女性向けのソフトな安ワインとされているが、この地での味わいは濃厚なタンニンを感じるいい酒だった。いろいろな種類のプロシュートやサラミ、肉の塩漬けを温めたもの、カボチャのニョッキ、牛肉のソテーポレンタ添えなど素朴な味わいに旅の喜びを感じる。次の朝パルマの街を散歩してZenith社製の小さなアンティック金ムク腕時計をみつけ購入。200ユーロという安さに幸福感にひととき浸る。その後教会や広場を見てあるきミラノへの電車にのりこむ。

ロロピアーナ
ロロピアーナのスパチオ

次の日ミラノから北1時間半くらいのところに位置するロロピアーナにいく。当店ではロロピアーナの服地を多く扱っているので、担当者とのミーティングのため毎年のように行っている。工場に隣接するショップ(=スパチオ)もとても魅力的でそこにいくのも楽しみ。工場横にあったショップは便利なゲンメという高速道路のインター近くに移動してさらに大きくなった。ロロピアーナ社は自社製のカシミヤやウールの服地をつかってエレガントな製品をつくっている。以前はマフラー&ショール中心だったが、近頃ほとんどすべての男女のアイテムが揃い、数が増えてきたので大きくする必要があったのだろう。広大なスペースにバールなどがありおとずれたときもエレガントなイタリア婦人たちが多く買いにきていた。今回はカシミアやシルクのエレガントで柔らかい素材、とくにウール長の長いカシミアだけをつかったスパンカシミア服地をいくつか手に入れた。

<おまけページ・・・イタリアで食べたもの>

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